理中湯

体質の解説

患者の咳嗽(せき)は、冷え(寒邪)が体内に侵入したことにより発生しています。寒邪が肺に侵入すると、肺の「宣発作用」(気を上に拡散させて外に発散する機能)が低下し、体内の冷えや湿気を排出できなくなります。その結果、肺気が停滞し、咳嗽が生じます。寒邪が原因の咳嗽は、通常、痰が少なく白っぽい、冷たい空気で悪化するといった特徴があります。

漢方処方:理中湯

効能: 中焦(脾胃)を温め、気を補い、寒邪を除去する処方です。肺を直接温めるだけでなく、脾胃の働きを整えることで全身の気血の巡りを改善し、肺の機能を助けます。

生薬名と解説

1. 人参(にんじん)
気を補い、全身のエネルギーを増強する。特に脾胃を補うことで、肺の機能をサポートする。
2. 白朮(びゃくじゅつ)
脾胃を温め、湿を取り除き、消化機能を助ける。寒湿による停滞を改善する。
3. 乾姜(かんきょう)
胃腸を温め、冷えによる不調を改善。体を温めることで肺の冷えを和らげる。
4. 甘草(かんぞう)
調和作用があり、他の生薬を補助する。炎症を鎮め、咳嗽を和らげる。

適応症

理中湯は、以下のような冷えによる症状に適応します:

1. 消化器系の不調
胃腸がて冷える痛みがある、食欲不振、嘔吐、下痢。
2. 冷えによる咳嗽
寒邪によって肺の宣発作用が低下し、咳嗽が発生している場合。
3. 全身の冷えによる体力低下
手足が冷える、倦怠感、エネルギー不足。
4. 慢性的な冷え症
特に脾臓胃虚寒(脾臓と胃が冷えて機能が低下している状態)。

使用方法

服用方法
1. 摂取量は
通常、1回分として湯液にして服用します。煎じた漢方を1日3回に分けて、食前または一時的に温かい状態で飲むと効果的です。
2. 服用期間
症状に応じて服用期間は異なりますが、医師や漢方薬師の指導により、必要最小限の期間で服用します。

煎じ方
1. 生薬を水約600~800mlに浸し、30分程度置いてから弱火で煎じます。
2. 半量になるまで煮詰めた後、漉して飲みます。
3. 温かい状態でお召し上がりください。

注意事項

服用時の注意
1. 冷たい食事や飲み物を好むが、漢方の効果を考えて、冷たいものは控えて、温かいものをお召し上がりください。

2. 服用タイミング
食間に飲むと吸収が良くなりますが、胃が弱い場合は食後に飲んでも構いません。

3. 併用薬
他の薬を服用している場合は、医師または薬剤師にご相談ください。

4. 過剰摂取は
指定された量以上を摂取しないようにしてください。

注意すべき体質・状態

1. 高熱のある風邪には適応しない
理中湯は冷えの症状に適しているため、熱性症状には適していません。
2. 妊娠中の服用
妊婦には慎重に使用します。医師にご相談ください。
3. アレルギー体質
生薬にアレルギーがある場合は摂取を避けてください。
4. 長期間の服用
万が一服用する場合は、医師の指導を受けてください。

副作用について

まれに以下のような副作用が起こります:
軽い不快感
下痢、吐き気
発疹やかゆみ(アレルギー反応)

副作用が見られた場合は直ちに服用を中止し、医師に相談してください。

服用中の生活の注意

体を冷やさないようにする。
規則正しい生活習慣を心がけ、過労を気にする。
冷たい食べ物や飲み物を控えて、消化に良い温かい食事を摂る。
入浴で体をしっかり温める(38~40℃で15分程度)。

理中湯は冷えによる症状に非常に効果的な処方ですが、正しく使用し、生活習慣の改善を賭けて、効果を最大限に発揮してください。

ツボ治療の配穴

1. 肺兪(はいゆ)
場所: 背中、肩甲骨内側の第3胸椎の高さ。
効果: 肺を温め、肺気の流れを改善する。

2. 中府(ちゅうふ)
場所: 鎖骨の下、大胸筋の外側端付近。
効果: 肺の宣発作用を高め、咳嗽を緩和する。

3. 足三里(あしさんり)
場所: 膝の下、外側のくぼみから指4本分下。
効果: 脾胃を強化し、全身の気血の巡りを改善する。

4. 合谷(ごうこく)
場所: 手の甲、親指と人差し指の間のくぼみ。
効果: 寒邪を散らし、気の巡りを促進する。

5. 気海(きかい)
場所: おへその下約2寸(指3本分)。
効果: 冷えを改善し、気を補う。

食べたら良い食材

1. 体を温める食材
生姜、ネギ、ニンニク、シナモン
冷えを改善し、体を温める作用があります。

2. 気を補う食材
山芋、もち米、大豆、栗
脾胃を助け、気を補うことで肺の働きを支えます。

3. 咳を鎮める食材
梨(加熱したもの)、百合根、黒豆
咳嗽を和らげる作用があります。

4. 湿を除く食材
冬瓜、緑豆、大根
体内の余分な湿を取り除き、肺の負担を軽減します。

おすすめの生活改善

1. 入浴
方法: 40℃前後のお湯に15~20分浸かる。生姜湯やよもぎ湯を加えると冷えの改善に効果的。
注意: 入浴後は体をしっかり拭き、冷えないようにする。

2. 適度な運動
ウォーキングやストレッチなど軽い運動を行い、全身の気血の巡りを促す。運動後に冷えないよう防寒を心がける。

3. 日光浴
朝の日光を浴びることで陽気を補い、体を温める。10~15分程度が目安。

4. 室内環境の工夫
部屋を暖かく保ち、湿度を適度に調整する。寒い場所や風の強い場所を避ける。

5. 呼吸法
深い呼吸を意識することで、肺の機能を高める。吐ききってとめるのも効果的。
ヨガの呼吸法も効果的。

理中湯は、冷えによる咳嗽の改善に有効な処方です。ツボ治療や生活改善を組み合わせることで、体質の改善と症状の緩和が期待できます。