藿香正気散

体質:冷えによる風寒感冒(風邪)
患者は冷えにより発汗できず、体内の「邪気」(風邪や寒邪)が発散されずに滞っています。この滞りは、頭部に気血を集中させ、頭痛や重だるさを引き起こしています。また、冷えによる胃腸の機能低下も見られる場合があり、これがさらに症状を悪化させる原因となります。中医学的には、これは「風寒挟湿」の状態とみなされ、湿邪(湿気の邪気)も加わっている可能性があります。こうした状況においては、藿香正気散が効果的です。

 

おすすめ処方:藿香正気散(かっこうしょうきさん)

藿香正気散は、寒邪や湿邪による体の不調を調和し、発汗を促し、気の巡りを改善することで症状を和らげます。特に風邪の初期や冷えによる体調不良に適しています。

生薬とその効果

1. 藿香(かっこう)
→ 芳香化湿(湿を除く)、理気作用。湿気を取り去り、胃腸の働きを改善し、気の巡りを整えます。

2. 半夏(はんげ)
→ 化痰止嘔(痰を取り、吐き気を止める)。湿による消化不良や気滞を改善します。

3. 茯苓(ぶくりょう)
→ 健脾利湿(脾を強め、湿気を取り去る)。脾胃(消化器系)の機能を強化し、体内の余分な湿を取り除きます。

4. 厚朴(こうぼく)
→ 行気化湿(気を巡らせ、湿を取り除く)。腹部の張りや消化不良を緩和します。

5. 紫蘇葉(しそよう)
→ 発汗解表(外邪を追い払う)。冷えによる風邪や頭痛を改善します。

6. 大腹皮(だいふくひ)
→ 行気利水(気を巡らせ、水分代謝を促進)。体のむくみや滞りを改善します。

7. 白朮(びゃくじゅつ)
→ 健脾益気(脾を強化し、気を補う)。胃腸を調整し、体力を回復させます。

8. 桔梗(ききょう)
→ 宣肺利咽(肺を整え、喉を潤す)。呼吸器の症状を改善します。

9. 陳皮(ちんぴ)
→ 理気健脾(気を整え、消化器系を助ける)。胃の不快感や吐き気を和らげます。

10. 甘草(かんぞう)
→ 調和諸薬(生薬の効果を調整)。のどの炎症を抑え、全体のバランスを取ります。

11. 生姜(しょうきょう)
→ 温中散寒(体を温め、寒気を散らす)。冷えによる悪寒や嘔吐を改善します。

12. 大棗(たいそう)
→ 補中益気(体を温め、気を補う)。脾胃の働きを高め、全身を元気づけます。

 

適応症と使用方法

適応症

冷えによる風寒感冒(寒気、頭痛、発汗不良)
胃腸の不調を伴う風邪(吐き気、腹部の張りなど)
湿邪による重だるさや倦怠感

服用方法

生薬を煎じて、1日1~2回に分けて温服します。
市販のエキス顆粒を使用する場合は、パッケージの指示に従って服用してください。

 

注意事項

1. 藿香正気散は湿邪や寒邪による症状に適していますが、体の熱が強い場合(喉の渇きや高熱)は使用を避け、適切な処方を選択してください。
2. 胃腸の弱い方や妊娠中の方は、使用前に専門家に相談してください。
3. 症状が悪化する場合や、数日経っても改善が見られない場合は、中医師や医療機関に相談してください。

藿香正気散は、冷えや湿気による頭痛や風邪症状に適した漢方薬で、特に胃腸機能の改善を同時に目指せる優れた処方です。